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金沢地方裁判所小松支部 昭和52年(わ)73号 決定

少年 T・I(昭三三・一一・二生)

主文

本件を金沢家庭裁判所に移送する。

理由

本件公訴事実は別紙記載のとおりで、この事実は一件記録によつて認められるところ、本件はいわゆる自動車の無免許運転、ひき逃げの事案で、その罪質、態様とも悪質であるほか、被告人の行動傾向、犯罪親和性を考慮すると、被告人に対し刑事処分をもつて臨み、その刑責を問い、強度の矯正教育を実施するのが相当であると思料されないではないが、一方、被告人は未だ少年で可塑性に富み、その素質、環境、反社会性の程度その他諸般の事情を考察するときは、この際被告人に対し反省を求め、矯正教育の成果をあげるためには、むしろ被告人を保護処分に付し、かかる見地から強力な矯正保護教育を実施することが適切かつ妥当な処遇と判断されるので、少年法五五条により、本件を金沢家庭裁判所に移送することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 国盛隆)

別紙

被告人は、

第一公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五二年四月二〇日午後九時一五分ころ、加賀市○○○○町××番地先道路において普通乗用車(○××○××××号)を運転し、

第二普通自動車の運転免許を有しないが、同免許取得のためしばしば自動車を運転し、かつ、自動二輪車の運転免許を有しその業務に従事するものであるところ、前記日時ころ、前記自動車を運転し、加賀市○○小学校方面から同市○○○○町方面に向け時速約四〇キロメートルで進行し、同市○○○○町××番地先の交通整理の行なわれていない交差点手前にさしかかつたが、同交差点手前には石川県公安委員会が設置した一時停止の標識があるうえ、自車進路と交差する左右道路には中央線も標示されて優先道路となつていたから、右一時停止の標識に注意し、同交差点の手前で一時停止するはもちろん、左右の安全を十分確認したのち、同交差点に進入しなければならない業務上の注意義務があるのにこれを怠り、自車に先行する友人運転の自動二輪車に追従することのみに注意を向け、前記標識を見落して一時停止することなく、かつ、左右の安全を確認しないまま漫然前記速度で同交差点に進入した過失により、折から右方道路より同交差点に進入してきたA子(当二二年)運転の軽四輪乗用者左側面に自車前部を衝突させて右A子車を横転させ、よつて同女に対し加療約二週間を要する頭部外傷、右耳介後部挫創などの傷害を、同車の同乗者B子(当二五年)に対し加療約一週間を要する頸椎捻挫の傷害を、同じくC子(当二五年)に対し加療約三週間を要する頸部挫傷、顔面多発性挫創などの傷害をそれぞれ負わせ、

第三前記日時場所において、前記のごとく交通事故を惹起し前記A子ほか二名に傷害を与えたのに、直ちに車両の運転を停止して負傷者の救護、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなかつた。

ものである。

編注 受移送審決定(金沢家 昭五三(少)五九号 昭五三・二・二四保護観察決定)

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